震災以降の設計

3.11の震災、津波でとある鉄道橋が流された。形式はPC上路橋。隣接する下路橋梁が現存することから、津波による外力を受けて落橋したものと考えられる。

復旧の考え方は。
本橋のスパンは約30m。いわゆるスパンから決定される橋梁形式でいえばPC桁となるのだろう。しかし、今回はそもそもの落橋の原因である津波の外力を考えないわけにはいかない。従来形式である上路橋が避けられるのはもちろん、下路形式についても面として桁が立ち上がるため「想定外」に対する考慮も必要となる。
例えば、これに替わって考えられる形式に鋼下路トラスがある。30mというスパンから、上弦材の無いポニートラスのようなものが経済的に優れるのだろう。

(小貝川橋梁)

ここまで書いてみたところで問題なのは、結局のところ形式によるゴールイメージを持っているところ。少し意識的に離れようとしてみる。

ここからは完全なメモランダム…
○ひとまず、ポニートラスをそれとして受け取るのではなく「下路形式で壁式の桁とならない」機能の面で捉えておく。この点、通常のトラスとの差はないが、スパンも含めた経済性の条件によって変形していくはずである。

○この機能に並行して問われるであろう問題に上弦材の省略による「桁の面外方向の剛性」がある。通常あるような桁内側の補剛材も考えられるが、内側への倒れ込みを抑えるケーブル(引張材)を桁外側に張り出す、もしくは三次元的な構造形態も考えられる。この際、架線柱を含めてみても良いかもしれない。

○積雪が見込まれる地域かどうか。太平洋側なので考慮に入らない可能性もあるが、場合によっては開床式や融雪設備も条件として併せて並べておく必要がある。「雪が落ちる、もしくは掃き出しやすい」ということ。

○ディティールの部分はどうか。細かい格点に限定するが、ここも詰まるところ力をどう伝えるのか、ということに他ならない。全体の応力系の一部として「集中点となることを避ける」

○さて色はどうか。今、色は全ての要素に輪郭を与える役割を担えないだろうか、ということを微かに考えている。諸要素を並べた時に吐き出されるかたちは無数にあるかもしれない。例えば、かたちと色の関係付けができるのなら、ストライクゾーンとして絞られた色からかたちが導かれはしないだろうか?震災復興橋梁が設計された当時の論説でも”必要な部材、要素に輪郭を与えていくのは結局のところ人の判断であり、感性とは切り離せない”というようなことが書いてあったと記憶している。

…などなど。まだまだ考えられる。

今までにない性能を要求されるならば、設計の考え方を改める機会になるのだと思う。従来の検討を避けて通る、もしくは惑わされないためにも、ストックとツールについても考えていきたい。誠実さと野心的であることに替えて。
必要な要素の単純な足し引きを越え、全体を全体として処理できる方法も強い味方となるのでは。

まあ、結局のところはまだまだ想像でしかないのですが…。